フェミニズム(Feminism)は、男女の平等な権利を求めるとともに、全ての人が社会的、政治的、経済的な権利や平等を追求できる社会を目指す運動です。
フェミニズムの主な目的は、男女平等の実現、ジェンダーに基づく差別や不平等の撤廃、女性の自己決定権の向上などです。そのためには、正しい理解が必要です。
本記事では、フェミニズムの歴史や現代の状況、オンライン・オフラインにおけるフェミニズムの活動を解説します。
フェミニズムの歴史とその目的
この運動は、歴史的な変遷を経て第一波から第三波までの大きな流れがあり、異なる焦点やアプローチを取っています。そして、それぞれの時代に特徴や目的があります。
第一波 | 男性と平等の市民権を求める運動 |
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第二波 | 女性の家庭での役割概念や生殖の自由など、私的領域で起きていた問題が社会の男女不平等問題と絡み合っていることを訴求する運動 |
第三波 | 性別だけでなく人種、宗教、性的指向など様々な差異に関係なく、誰もが自分らしくいられる社会を目指す運動 |
第一波フェミニズム
第一波のフェミニズム運動は、市民権の平等という基本的な権利を求めました。主に、女性の参政権や相続権、財産権、政治的平等を求める運動でした。この時代のフェミニズムは、社会の不平等を解消し、女性の地位を向上させることを目指しました。
イギリスやアメリカで主に展開されたフェミニズム運動には、マリー・ウルストンクラフトやエリザベス・キャディ・スタントンなどの著名な活動家が参加しました。彼女たちは、女性が男性と平等な権利と機会を持つことが、真の平等な社会を築く鍵だと主張しました。
第二波フェミニズム
第二波のフェミニズムは、1960年代から1970年代にかけて盛んになりました。この時代のフェミニズムは、家庭内や職場での女性の役割に疑問を投げかけ、生殖の自由を含む女性の権利を訴えました。
これは、シムオン・ド・ボーボワール、ベティ・フリーダン、キャロル・ギリガン、グロリア・スタイナムなどの著名な論者によって提唱されました。
第二波フェミニズムは、女性が自分の人生を自由に選択することができるようになることを目標としています。これには、家庭、職場、学校など、様々な場所での男女の平等を実現する必要がありました。また、フェミニズムは私たちの意識を変えることで、女性が真に自由になれると考えました。
第三波フェミニズム
第三波フェミニズムは、1980年代終わりから1990年代にかけて行われた、「インターセクショナリティ」「ダイバーシティ」を重視し、「自分らしさ」を求める運動のことです。
第三波フェミニズムでは、性別だけでなく、人種、宗教、性的指向など様々な差異に関係なく、誰もが自分らしくいられる社会を目指す動きがとられました。こうした第三波フェミニズムの動きは、国境や人種を越える活動であるため、「グローバル・フェミニズム」とする見方もあります。
現代のフェミニズム運動
現代のフェミニズム運動は、SNSを中心としたインターネットを活用して盛り上がっています。オンラインでのフェミニズム運動は、「Me too運動」「Ku too運動*」などが盛り上がっており、若い世代を中心に様々な問題提起や議論を行っています。
*参考:ハイヒール強制やめて「#KuToo運動」世界が共感 | 朝日新聞
しかし、エコーチェンバー現象※の危険もあり、フェミニズムと公言することをためらう人も多く存在します。
※エコーチェンバー現象
エコーチェンバー現象(エコーチャンバー現象、Echo chamber)とは、自分と同じ意見があらゆる方向から返ってくる「反響室」のような狭いコミュニティで、同じような意見を見聞きし続けることによって、自分の意見が増幅・強化されることを指します。
ツイッターなどのSNSや、インターネット掲示板など「同じ趣味・思想の人とつながることができる」場で起こりやすい現象です。
インターネットでのフェミニズム運動
インターネット上でのフェミニズム運動は、一人ひとりの声が広がりやすく、議論が活発に行われる一方で、過激な主張や個人攻撃、エコーチェンバー現象の危険性もあります。これらの問題は、フェミニズム運動を理解し理性的に取り組むことで克服できると考えられます。
インターネット上でのフェミニズムは、若者にもメッセージが届きやすく、ディスカッションの幅が広がるというメリットもあります。それゆえ、フェミニズム運動は新たな展開を迎えていると言えるでしょう。
オフラインでのフェミニズム運動
インターネット上だけでなく、現実世界でもフェミニズム活動が行われています。デモンストレーションやシンポジウム、講演会など、さまざまな方法でフェミニズムの問題提起や意見交換が行われています。
これらの活動を通じて、直接会話をして理解を深めることができるため、実際の運動への参加が求められます。
オフラインでのフェミニズム活動は、地域や企業のレベルでも展開されており、男女共同参画社会※やダイバーシティの推進、ジェンダーに関する教育や研修なども実施されています。現場レベルでのグラスルーツ活動も、フェミニズム運動には不可欠な要素です。
※男女共同参画社会とは
「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」です。
(男女共同参画社会基本法第2条)
フェミニズムとジェンダーギャップ指数
ジェンダーギャップ指数は、男女間の格差を表す指標であり、フェミニズム運動の進捗や課題を示す重要な情報源です。日本のジェンダーギャップ指数は低く、男女平等を願う全ての人が声をあげることで問題解決につながるとされています。
日本のジェンダーギャップ指数
出典:GGI ジェンダー・ギャップ指数 | 内閣府男女共同参画局
日本のジェンダーギャップ指数は、世界ランキングではあまり高い位置にはありません。経済や政治、教育、健康などの分野での男女格差が指摘されており、法改正や政策の見直し、社会全体の意識改革が求められています。
しかし近年は、企業や自治体などで、「女性活躍推進」「ダイバーシティ・インクルージョン」などの取り組みが活発化しており、徐々に改善の兆しも見られます。
これからのフェミニズム運動は、日本のジェンダーギャップ指数* 改善に向けて、さらに効果的なアプローチが期待されています。
*参考:男女共同参画に関する国際的な指数 | 内閣府男女共同参画局
国際的なジェンダーギャップ指数の比較
国際的には、北欧諸国が高いジェンダーギャップ指数ランキングを維持しています。これらの国では、育児休暇制度やフェミニズム教育が進んでおり、男女の機会均等と社会的な地位の向上を実現しています。
他の国々も、これらの先進国の取り組みを参考にして改革を進めることが求められます。
また、フェミニズム運動は世界的に広がっており、国境を越えた連帯や交流が盛んになっています。様々な国や文化での性差別や格差を理解し、より包括的なフェミニズムの実現を目指すことが、今後の国際社会の課題です。
まとめ
フェミニズムは、男女の平等な権利を主張しながら、全ての人が自分らしく生きる社会を目指す運動です。歴史的には第一波から第三波までの大きな流れがあり、現代ではオンラインでの運動が盛り上がっています。
日本のジェンダーギャップ指数は低く、引き続き改善が求められる状況です。
フェミニズム運動を理解し、理性的に取り組むことで、より良い社会を築くことができるでしょう。