みなさんは、わたしたち先進国で廃棄された電子ゴミがどこでどんな風に処理されているか、ご存じでしょうか?
実はその電子機器のゴミがガーナに持ち込まれ、安い給料で焼却処分にあたり、その有毒ガスで命を落としている人がいることは、おそらくほとんどの日本人に知られていない事実でしょう。
世界の電子機器の墓場と呼ばれるガーナのスラム街・アグボグブロシー。
その規模はなんと、東京ドーム30個分にも及びます。
そんなスラム街の現状に衝撃を受け立ち上がったひとりの美術家がいます。
それが、長坂真護さんです。
世界最大級の電子機器の墓場「ガーナ・アグボグブロシー」
2009年に自ら経営する会社が倒産し路上の絵描きになった長坂氏は、2017年6月に単身、世界の電子機器の墓場と呼ばれるガーナのスラム街・アグボグブロシーへ訪問。
そこで彼は、1日わずか500円の日当で先進国が捨てた電子機器を必死に燃やしながら生きる彼らと出会います。
目の当たりにしたのは、大量のガスを吸って癌になり、30代でこの世を去ると言われている彼らの姿でした。
その時、長坂氏はこう決断します。
『彼らを犠牲にしてまで、我々が富を形成することがそんなに大事なことなのか?この真実をアートをもって先進国に伝えたい』
長坂真護さんの経歴
高校卒業後デザイナーを志し、歌舞伎町ナンバーワンホストへ
彼は、画家として初めから売れたわけではありませんでした。
1984年に福井県に生まれた長坂氏は、高校卒業後に歌手を目指して上京。その後デザイナーを志し、ロンドン留学費用を稼ぐために歌舞伎町でホストになり、在籍したホストクラブでナンバーワンになります。
立ち上げたアパレル会社が倒産、莫大な借金を抱える
その後、留学をやめ、ホスト時代に稼いだ3,000万円を資本にアパレル会社を設立。
ですが会社は倒産し、手元には莫大な借金が残りました。
この時、ホスト時代のプライドが邪魔をして一般企業で普通の仕事をする気になれず、元手がかからないという理由で路上画家となります。
ですが現実は厳しく、どの画廊にも相手にされず、当時の年収は100万円前後がやっとだったそうです。
長坂真護の評判が広まり作品が注目を浴び始める
電子廃棄物で作ったアートが1,500万円の高値で売れる
長坂さんの作品が注目を集め始めたのは、ガーナのスラム街に堆積している先進国の電子機器製品の廃棄物でアートを作り始めてからでした。
始めて彼の作品が高額で売れたのは2018年。
ガーナのスラム街で暮らす男の子を描いた「Ghana’s son」という作品は、なんと1,500万円もの高値がつきました。
作品の売上5%が報酬、それ以外はガーナのために
彼は作品の売上のほとんどをガーナのスラム街の教育や自立支援、リサイクル工場に設立、農業事業をはじめ、経済基盤を整えるために使用しています。
彼が報酬として受け取るのは作品売上の5%のみ。
それ以外は、納税分を除きすべてガーナの支援のために使用されています。
農業事業。コーヒーやモリンガ、オリーブの苗などを、アクラ近郊の3エーカーの農園で育成。
スラム街初の学校『MAGO ART AND STUDY』を設立。今後50年、長坂氏が死ぬまで無料を保証。
電子廃棄物を回収し、MAGOブロックの原料であるプラスチックチップをリサイクル工場で生産。
画像出典:長坂真護オンラインギャラリー
長坂真護氏が提唱する〝サステナブル・キャピタリズム〟とは
作品の所有→作品の価値上昇への投資→スラム街の発展
買ってくれた人も、現地の人も、地球も喜ぶ。
文化、経済、環境全てが動く、これが真のサステナブル。出典:長坂真護オンラインギャラリーより
長坂氏は「文化」「経済」「社会貢献」の3つの歯車が持続的に回る形態、「サステナブル・キャピタリズム(持続可能な資本主義)」を掲げて活動しています。
彼のガーナ作品を所有すればするほど、現地のゴミが減り、経済に貢献し、文化性も高まる。そして同時に、世界中にこの問題のメッセージが広がります。
さらに、こうした活動を経て長坂氏の美術家としての評価が高まれば、アート作品の価値は購入時の100倍になることも不可能ではありません。
実際に、かつて彼がNYの路上で300ドルで売っていた絵画は、今ではコレクターの間で30,000ドルで取引されています。
アート作品にはそうした【投資対象としての価値】もあるため、世界中の彼のフィロソフィーに賛同した投資家や経営者、富裕層が、作品を購入することで支援しているのです。
世界が美しくなければ 人も美しく人生を歩めない
そのために美術は 美しい術で 我々を平和へと導く– 長坂真護 –
長坂氏の絵画は30万円前後から数千万と、なかなか一般の方には手が届かない金額かもしれませんが、
という方でも、アートギャラリーへの来場、グッズや書籍の購入などで彼の活動を応援することができます。
彼のアートをプリントした受注生産のTシャツは数千円から販売されていますので、ぜひオンラインストアもチェックしてみてくださいね。