某ペットショップで顧客トラブルが続発、さらにSNS上ではその対応や在り方を巡って意見が飛び交う騒ぎになっています。
この記事では、ペットショップ業界の闇や問題点、売れ残りのペットをはじめ動物を引き取る方法について説明します。
某ペットショップの内部告発のきっかけ
購入した子犬がすぐに体調不良&瀕死の状態に
購入した子犬が購入後すぐに体調を崩し、入院したことを8月5日に『デイリー新潮』が報じました。
2023年6月、20代の女性が購入したミックス犬(異なる純血種を掛け合わせた犬)が、引き渡し当日から体調を崩し、2日後に入院。
女性が獣医に子犬を診せたところ、「寄生虫に蝕まれて瀕死の状態」と宣告されました。
事情を購入した店舗に伝え、治療費の支払いを求めたところ、担当者に、
「治療費は払えない。犬の交換ならできます」
と突っぱねられたのだそうです。
命を軽視しているのでは?との議論に発展
この発言に対し、SNSをはじめインターネット上で
「命を何だと思っているんだ」「命を軽視するな」との批判の声が相次いでいます。
そしてこの告発を皮切りに、内部告発や裏事情が明らかになってきました。
デイリー新潮による内部告発の内容
グループ内で運営している大規模繁殖場が不衛生すぎる
デイリー新潮によると、某ペットショップグループ内では全国に11の大規模繁殖場を運営していますが、元社員は自身が勤務していた繁殖場で「ゴキブリやネズミが大量繁殖していた」と証言。
提供してくれた全国の繁殖状況をまとめた内部資料では、生まれてくる子犬の「死亡率」が高い月で30%を超えていたといいます。
「交配を嫌がるメスもいるのですが、かまれないようタオルを首元に巻いたり、2、3人がかりで押さえつけたりしてオスと交尾させるのです」
「ネズミも毎日2、3匹捕獲されるくらい、そこら中を走り回っています。そんな不衛生極まりない環境の中、妊娠した母犬が毎日20~30匹ほど産室でお産を迎えるのです。
広さは20~30畳くらいで1頭ごとに空間が仕切られていますが、常時、けたたましい鳴き声が響き、落ち着いて出産できる環境じゃない。
母体へのストレスは大きく、産みはしたもののネグレクトしたり、果てはわが子を食べてしまう母犬もいました。X氏はそのうち一施設で犬の繁殖を担当していたが、上から降りてくるのは、とにかく「生産性を上げろ」という指令だったのだそうです。
「もっぱら業務連絡に使われるグループLINEを通じ、出産率を上げ、死亡率を下げるようプレッシャーがかけられます。達成率がよければ、管理職には特別報酬が支払われました」
デイリー新潮より抜粋
こちらはあくまで内部告発ですのでさまざまな角度から事実確認が必要ですが、ペットショップには販売に付随するサービスにも問題視する声が上がっています。
独自のペット保険の内容が酷いとの声
某ペットショップには同社が提供しているペット保険があります。
公式ホームページには
お客様がワンちゃん・ネコちゃんを迎えられたあと、万が一その子が病気・ケガなどで死亡した場合に保障が受けられる制度です。
と記載されています。
しかし、その保障内容はというと、
保障条件
- 万が一、保障期間内にケガ(不慮の事故の場合も含む)や病気(先天性疾患も含む)により、該当ペットが死亡した場合に代替ペットをご提供いたします。
- ただし、死亡に至るまでの治療費の賠償はいたしかねます。
と、治療費の賠償はなく、「代替ペットのご提供」とあります。
そもそもペットはモノではありませんし、他の命と等価交換できるものでも重さをはかれるものでもありません。
動物を愛する飼い主さんは我が子同然の子が亡くなったからといって他の子と交換してもらって気が晴れるのでしょうか。
と思わざるを得ない内容です。
ペットショップでペットを購入すると、必ずといっていいほどペットショップの保険を勧められます。ですが、ペットショップの保険は任意のもので強制加入ではありません。
法律でも、ペット保険の抱き合わせ販売や強制加入は完全に違法とされています。(独占禁止法第19条)
不要な契約であれば、断固として拒否しましょう。
フードの定期購入契約問題
某ペットショップには、エサを定期的に届けるサービスに加入すると、購入の際に生体価格が最大50%割引になるというプランがあります。
この定期購入には5年間の縛りがあり、小型犬が到底食べきれない量も一律に送られてくるので、“量を減らしてほしい”という顧客からの要望が絶えないそうです。
しかし、その要望に対しても、“契約は完了している”と突っぱねるので、顧客とのトラブルが絶えないようです。カスタマーセンターには、多い時で1日に400件近いクレームを含む電話がかかってくるそう。
そこで1年くらい前、電話をフリーダイヤルからナビダイヤルに切り替えました。電話代がかかるなら、客も気軽にかけてこないだろうという算段です。
デイリー新潮より
動物は成長や体調に応じてフードを切り替える必要があり、特に臓器に不調があった場合は獣医師による適切な治療とともに、療法食への切り替えを勧められます。
動物は人間と同じように歳をとるのではありません。
小型犬は、たった1年半で人間の年齢に換算すると20歳となり、それ以降の1年は人間の4年分に換算されます。
大型犬の場合は、生後2年で人間の20歳程度となり、それ以降の1年は人間の7年分として換算されます。
出典:現代ビジネス
特に、ペットショップにいるような血統書の犬や猫は、後述するように遺伝性疾患になりやすいことが専門家により指摘されています。
同じフードを数年与え続ける契約は、動物や飼い主目線のサービスとは到底思えません。
ペットショップの裏側と問題
悪徳業者から動物を仕入れていることも
画像出典:AERAdot.
2021年11月に、長野県警は仕入業者「アニマル桃太郎」社長の百瀬耕二容疑者(60)と社員の有賀健児容疑者(48)を、動物愛護法違反の疑いで逮捕しました。
参考「死んだ犬は弁当ゴミと一緒に処理」「餌は2日に1回、水は川から」…元従業員が告発 悪質ペット繁殖業者逮捕《ペットブームで飼育頭数は2倍強に》
アニマル桃太郎の飼育環境の劣悪さを元従業員のA子さんが、女優の杉本彩さんが代表を務める公益財団法人動物環境・福祉協会Evaに告発したことでようやく県警や保健所が動き、摘発につながりました。
週刊文春に記載されていた「アニマル桃太郎」の虐待内容は次のとおりです。
- 糞尿は垂れ流しで、たまにホースでケージに水をかけて床に流すだけ
- 劣悪環境での飼育(400頭〜1000頭ほどの犬の世話を、従業員たった5人でずっと回していた)
- 山中にある犬舎の屋根は、ブルーシートを天井に被せただけの簡素な造りで、雨漏りをしていても放置
- 死んだ犬は弁当のゴミと一緒にゴミ袋に
- 無資格の人間が無麻酔で帝王切開
- ハムスターは1つの衣装ケースの中に200匹ぐらい飼っていた。共食いがひどく、ケージの中には骨になった死体や、下半身を食いちぎられて呻いているハムスターもいた
- 自分で腸を食いちぎり死ぬ犬も
- 足の指が6本ある奇形が生まれる
- 腸が出たまま放置された犬がいた
- 産めなくなったら『引き取り屋』に売り払う
- 血統書の偽造
- 子犬を窒息死させた
- 川の水を飲ませていた
- 給水機に藻が繁殖していた
- エサは1度に2日分を補充するのみだったためエサの取り合いで弱い子は衰弱死
- 亡くなった動物に気づかず数日放置
購入者側は仕入れ業者の精査までは把握できないため、ペットショップで購入することはこうした悪徳ブリーダーを増やしてしまうことに繋がってしまう可能性があります。
ペットショップで「売れ残った犬と猫」はこうして処分される
「引き取り屋」の実態
ペットショップは売れ残った場合「在庫」を抱えることになります。こうした背景から登場したのが「引き取り屋」です。
引き取り屋は売れ残った犬や猫をブリーダーに転売したり、実験動物として販売を行います。しかし、すでに年老いていたり、病気だったりする場合は転売先が見つからないことも多いのだそう。
引き取り屋はそのような犬猫も、ペットショップやブリーダーからお金をもらって引き取します。しかし、引き取り屋に連れていかれた動物たちのほとんどが悲惨な末路を迎えています。
動物愛護管理法が改正された翌年2014年10月、栃木県の鬼怒川の河川敷で40匹を超える小型犬の死骸が見つかり、翌月には同県の山林で27匹の死骸と8匹の瀕死の犬が発見されるという事件がありました。
「引き取り屋は繁殖場、オークション会場、ペットショップなどあらゆるところに顔を出します。口ではきれいなことを言いますが、転売できる子だけを選んで、その他は処分するのです。
兵庫県のある業者は、九州で行われたオークションからの帰り道の山林に大きな穴を掘っておいて、そこに価値のない犬や猫を生きたまま放り込んでいた。土をかけてしまえば、それでおしまい。保健所が対応してくれない以上、誰かがそのような役割を担わされるのです」
出典:現代ビジネス
逮捕された引き取り屋は「ブリーダーの知人から犬を引き取ってほしいと言われ、100万円をもらって引き取った。転売するつもりだったが、トラックで運んでいる途中で死んでいるのに気づき、処理に困って河川敷や山林に捨てた」と供述しています。まだ生きていた8匹については、「すでに死んでいると思った」と話した。
ペットショップで「売れ残った犬と猫」はこうして処分される…その「残酷すぎる実態」を暴露する | 現代ビジネス 参考:
ペットショップに対する社会的評価は?
「生体販売を禁止すべき」と反応
【ペットショップの生体販売に反対します】
うちの犬ゴロウは、史上最悪といわれ、現在公判中のペット繁殖場で産まれた犬でした。調べるうちに胸が潰れるような事実が判明。経緯を書きました。告発してくれた@everyanimal_eva の皆さんと杉本彩さん@aya_sugimoto719 に感謝。https://t.co/jGZ5Jl0ynx— 井田奈穂|一般社団法人あすには代表理事|Naho Ida|選択的夫婦別姓、ジェンダー平等を実現します (@nana77rey1) October 4, 2023
わたしは生体販売に100%反対です。
ペットショップで動物を購入しないで下さい。
繁殖させて販売するという行為は表からどんなに綺麗安全に見えても「絶対に」悲劇を生みます。絶対に動物はこのシステムの中で幸福にはなりません。
動物と暮らしたい方は保護動物シェルターから迎えて下さい。— 児嶋都/Miyako Cojima (@miyakocojima) September 27, 2023
X(旧Twitter)でも辛辣な意見が飛び交い、中には実際にペットショップに勤めていた方の意見も散見されました。
「業界最安値」の売り文句に不快感を露わにする消費者も
某ペットショップ、今は改装されて綺麗な見た目になってるけど改装前はでっかく外壁に「業界最安値」って書いてた時点でお察しでどうなんだって思ってたし、それでもうさぎの飼育グッズあれば便利だと思って入ったら無くて残念に思ったけど、今になって思えば無くてよかったな、本当に。
— kleine (@kleine0217) September 18, 2023
「業界最安値!」がキャッチコピーのペットショップが動物のこと考えるワケがないなんて一目でわかるでしょうに
— 夢灯のスターゲイジーパイ (@yoroidori) September 18, 2023
通勤でいつも通る道にあるペットショップ。『業界最安値!』の看板が気に入らなくて一度も入ったことは無いのだけれど、今日通ったら建物取り壊してた。命を安売りするな。そういうこと。
— 25STONES (@xxHUMxHUMxx) August 27, 2023
ペットを人為的に繁殖させることの問題点
ブリーダー行為そのものの倫理的問題
悪徳ブリーダーばかりでなく動物のことを考えているまともなブリーダーもいるという意見もありますが、ブリーダー行為そのものが生体購入を推奨・肯定しているということであり、動物に対する倫理観を低下させる一因となっているのも事実です。
そもそも、見た目や血統などは犬や猫の側に立ってみれば関係のないことであり、犬や猫の本能や自由意思を無視した強制的な行為です。
ブリーダーに対して良い悪いと議論している限り、生体販売に関わる地獄を終わらせることはできないでしょう。
遺伝性疾患の危険性
日本獣医生命科学大学の筒井俊彦名誉教授は、日本の犬は欧米と比べると目立って遺伝性疾患が多いと指摘しています。
その原因は、他でもない生体販売にあります。
2004年にマサチューセッツ工科大学を中心とするチームによって犬のゲノム配列が解読されて10年以上が経ち、犬の遺伝性疾患についての研究は大きく前進しています。
これまでに原因遺伝子が一つに特定された犬の病気は約250( 2019年時点、 Online Mendelian Inheritance in Animals調べ)。
原因遺伝子を持っていても見かけは健康で発症しない「キャリアー(保因者)」同士の繁殖を行うと、4分の1の確率で病気を発症する可能性のある犬(アフェクティッド)が産まれます。
こうした状況について鹿児島大学共同獣医学部の大和修教授(獣医臨床遺伝学)は、人気5犬種(プードル、チワワ、ダックスフント、ポメラニアン、柴犬)だけで新規の血統書登録の6割以上(18年、ジャパンケネルクラブ調べ)を占めている事実に言及し、以下のように話しています。
ある特定の犬種がマスメディアの報道で爆発的に流行し、短期間で可能な限り多くの個体を生産する努力が払われる。そんな土壌が遺伝性疾患を顕在化させ、新たに作りだす要因になっていると推測される。
自然界では、強い遺伝子が残り生命力の弱い生命が淘汰されます。
人間都合の身勝手な交配は自然観からは到底かけ離れた行為であり、遺伝性疾患の危険性を孕んでいることを鑑みれば、推奨しかねる理由が多いにあります。
国民生活センターには15年度、ペット店などで購入した動物に関する相談が前年度比5%増の1308件寄せられました(16年5月15日集計)。
その大部分が「買ったら病気にかかっていた」などペットの健康にまつわる内容だといいます。
ペットショップの売れ残りを引き取りたい時の方法
保護犬、保護猫の里親になるという選択を
前述の通り、ペットショップの売れ残りの子たちは、引取り屋に売られて過酷な運命を辿った結果、山中に遺棄されるなどして不遇な犬生、猫生を送ります。
そうした子たちは、運がよければ動物愛護団体に保護されることもありますが、ごくごく一部であるといえるでしょう。
2023年現在も、日本では身勝手な理由で捨てられて殺処分されている犬や猫がたくさん存在しています。実際に譲渡会に行くと、野犬の子だけではなく、元々はどこかの家庭で飼われていたのだろうと思われる血統書の子たちもたくさんいます。
家族を迎えるにあたって、ぜひ保護団体から里親になることを検討してみてはいかがでしょうか。
里親になるには、一定の審査を受けた後に保護団体や里親募集サイトから引き取ることができます。