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韓国で「犬食禁止法」が可決!36年に渡る犬食論争に終止符

犬
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韓国で「犬食禁止特別法」の制定案が国会本会議を通過し、食用目的で犬を飼育・処分・流通・販売する行為が禁止になりました。

これにより、過去36年に渡って続いてきた「犬食論争」が幕を下ろしました。

さとみ
さとみ
当記事では、特別法の具体的内容と、犬肉食が廃止されるまでの歴史的流れ、韓国国民の反応と価値観の変化を、時系列でご紹介します。

韓国で、食用目的で犬を飼育・処分・流通・販売する行為が禁止に

犬2024年1月9日、ソウル汝矣島にある国会議事堂の前で記者会見を開いた動物保護団体は、今回の法案について、

大韓民国が生命尊重に向けての新たな歴史を開いた。

と評しました。

参考:36年の論争に終止符…韓国「犬食禁止法」可決 | Yahoo!ニュース

 

犬食禁止特別法の具体的な内容

この特別法は、食用目的で犬を飼育・処分・流通・販売する行為を禁止する内容を含んでいます。

犬食禁止特別法の具体的な内容
  • 食用目的での犬の飼育・繁殖と処分、犬を用いて作った食品または加工品の取得・運搬・保管、販売とあっせん行為の禁止
  • 犬食の終了による廃業または転業に対する支援の根拠
  • 犬の飼育農場の運営禁止および犬食終了履行計画書の提出・履行

今後、食用目的で犬を処分した場合は、3年以下の懲役または3000万ウォン(約330万円)以下の罰金が課せられ、

飼育・繁殖・流通・販売した場合は、2年以下の懲役または2000万ウォン(約220万円)以下の罰金に処されることになります。

ただし、「飼育・処分・流通・販売などの禁止」に違反した場合の罰則条項は、法案公布から3年が経過してから施行する猶予期間が設けられています。

 

犬食をめぐる論争の歴史

歴史的な背景

犬肉
画像出典:世界が激怒する中国「犬肉祭り」の残酷さ | Newsweek日本版

韓国では、歴史的な背景から犬肉が一部の地域で食べられてきました。特に夏季に体力をつけるためとされ、一部の人々にとっては風習としての側面もありました。

 

ソウル五輪の開催に際し、国際社会が韓国の犬食文化を批判(1988年)

21世紀に入り、韓国の犬肉の消費が国際的な注目を浴びるようになりました。

犬食をめぐる論争の発端となったのは、1988年にソウル五輪の開催が確定し、国際社会が韓国の犬食文化を批判したことでした。

国外世論を沈静化するため、五輪期間中はソウル市が自主的に補身湯(ポシンタン=犬肉のスープ)の販売を禁止しましたが、その後はうやむやになっていました。

 

法的な変遷

動物保護法が制定(1991年)※ただし犬食は動物虐待の対象から除外

犬肉
画像出典:京畿道始興市にある犬農場の檻の中にいるイヌたち | Yahoo!ニュース

1991年に動物保護法が制定されましたが、それでも犬食は「伝統食文化」として認識され、動物虐待の範囲から除外されていました。

動物愛護団体や一部の国際的な団体は、犬肉取引の禁止を求め、韓国政府に対して規制を強化するように圧力をかけました。

犬肉取引を規制する法律が制定(2007年)

2007年には、犬肉取引を規制する法律が制定。その後も動物愛護に対する関心が高まり、規制が強化される流れにありました。

 

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領政権が発足(2022年)

「韓国固有の食文化」との意見も根強くあるほか、法律で禁止することへの反対意見も出ていました。

しかし、2022年5月に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領政権が発足して以降、急速に犬食を禁止する議論が進むことになりました。

今回の法制定の動きの背景には、動物好きとして知られる尹大統領の妻、金建希(キム・ゴンヒ)氏の影響もあると言われています。

金氏は2022年6月に、メディアのインタビューで「犬の食用を止めなければならない」と発言。
昨年4月には、与党「国民の力」の議員らが、犬肉を禁止するための法案を発議しました。

 

犬肉食文化の転換期

ペットと暮らす人が増えたことによる意識の変化

寝てる犬韓国国内では、

伝統食文化である

という主張と、

動物虐待だ

という世論とが衝突していました。

しかし、近年は韓国では若い世代を中心に動物福祉や動物愛護への認識が広がり、伴侶動物(ペット)と暮らす人の数が増加したことより、価値観の変化や犬肉食文化への反感も広がっていました。

一部のレストランや地域では、犬肉の提供を取りやめたり規制を実施する店舗もあります。

 

国民の93.4%が今後も「犬肉を食べる意向はない」と回答

アウェア2023の「犬食に対する国民認識調査」によると、国民の93.4%が犬肉を食べる意向はないと答えるなど、犬肉食の消費は衰退傾向にあり、事実上終了に向かっていました。

アウェアはコリアリサーチインターナショナルに依頼し、先月12~17日に全国の成人男女2000人を対象に調査を実施した。
その結果、94.5%に当たる1889人がこの1年間に犬の肉を食べた経験がなかった。

その理由を尋ねた結果、「情緒的に拒否感があるから」との回答が53.5%で最も高かった。これに

▽飼育、食肉処理の過程が残忍だから(18.4%)
▽生産・流通過程が非衛生的だから(8.8%)
▽周辺や社会の否定的な視線のため(7.1%)
▽おいしくないから(5.0%)
▽健康に良くなさそうだから(3.9%)――が続いた。

出典:韓国国民の93.4%が答えていた「犬肉、食べたことない。今後も食べない」| Yahoo!ニュース

参考韓国、犬肉食の歴史に幕 「犬食用禁止法」国会通過 市民の意識変化 | 毎日新聞

 

養犬業者が反対、「犬肉文化を尊重するべき」

一方で、韓国国内では、犬肉を食べる文化を尊重する声も未だ存在します。
地域ごとに異なる風習や伝統があり、これを尊重すべきだという主張です。

 

韓国の首都ソウルで12日、物議を醸す犬肉食への反対デモを動物愛護団体が実施した一方、養犬業者らが対抗デモを行い、犬肉を食べてみせたり、健康食品としてアピールするチラシを配布したりした。

(中略)

養犬業者が配布したチラシには、「犬肉そのものはコラーゲンの塊で、肌にも良く、美人になれる」と書かれており、また高齢者の健康にとっても利点があるとし、「市民の皆さん、われわれの祖先が何世代にもわたって口にしてきた、伝統的かつおいしい犬肉を、恥じることなく食べてください。そうすれば幸せで健康的な生活を送れます」と訴えている。

出典:韓国の養犬業者ら、犬肉食べて気勢上げる 動物愛護団体のデモに対抗 | AFP BB News

ただし、罰則条項は公布後3年後から適用され、犬肉に関連する飼育業者や飲食店への廃業支援金の給付なども盛り込まれています。

 

韓国の動物愛護団体の喜びのメッセージ

昨年9月19日、犬農場から救助された「トダミ」が犬の食用禁止を求めるイベントに参加し、国会本館の前でポーズを取っている
画像出典:犬農場から救助された「トダミ」が犬の食用禁止を求めるイベントに参加 |Yahoo!ニュース

この歴史的な法律の制定に関して、長年法改正に尽力してきた韓国の動物愛護団体の代表たちは、以下のように歓喜のメッセージを伝えました。

犬食が禁止される日が来るとは、感激で信じられない。犬食はこれまで多くの動物福祉問題の障害物だった。これで、大韓民国の動物運動にも一歩進む踏み台が用意された。

– チョ・ヒギョン代表(動物自由連帯)

KARAの前身の『アルムプム』は、食用犬問題を伝える『ヌロンイを生かす運動本部』から始まった。今日は大韓民国の時代錯誤的な慣習が正常化した歴史的な日。

– チョン・ジンギョン代表(動物権行動KARA)

 

森井 啓二(日本獣医ホメオパシー学会会長)
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