ヴィーガンとは、動物性の食品を一切口にせず、肉や魚だけでなく、卵や乳製品、ハチミツも避ける完全菜食主義者のことです。
ヴィーガンはもともと英国で提唱され、今では国内外で認知度が高まり、徐々に人気を集めています。
本記事では、ヴィーガンの特性、理由、種類、社会への影響、食事、そしてその未来について詳しく解説します。
ヴィーガンとは?
ヴィーガンは、動物の権利と環境保護を重視し、動物を使わない食生活を選択する人たちです。ヴィーガニズムは、動物の搾取や虐待に反対し、動物の権利を尊重することを重要視しています。
この考え方は、人間だけでなくすべての生物が共生することができる世界を目指しています。
動物愛護の精神から、衣類や日用品においても動物由来のものは避け、動物の犠牲を伴わない素材を使用します。
ヴィーガンになる理由
多くのヴィーガンがその食生活を選択する理由は、動物の権利保護、環境保護、そして健康の改善を目指すためです。
動物愛護のため
ヴィーガンの根底にある動物愛護の精神から、動物を食べることや利用することによる搾取や虐待を避けたいという考えがあります。このため、生活において動物を搾取しない生活を選択します。
また、ヴィーガンは動物の権利(アニマルライツ)運動にも関心が深く、一般的な市民団体から政治レベルでの働きかけまで幅広く活動しています。
環境問題への対策
出典:第一生命経済研究所
動物由来の食品の生産は、温室効果ガスの排出や資源の大量消費により、地球温暖化の主要な要因となっています。ヴィーガンは、このような状況を改善するために動物性食品の摂取を控え、環境に配慮した選択をします。
特に、牛のゲップから発生するメタンガスも地球温暖化の大きな要因となっています。
出典:第一生命経済研究所
ヴィーガンが乳製品を避ける理由は、主に倫理的・環境的・健康的な要因が絡んでいます。動物由来の乳製品と植物性ミルクを比較すると、土地の使用、温室効果ガス、水資源等において下記のような違いがあります。(※下記グラフ参照)
これは、持続可能な選択として切り替えるメリットを大いに示しています。
健康上の理由
動物性食品はコレステロールや脂質が多く含まれており、過剰摂取は健康に悪影響を与えることが知られています。
一方、野菜や穀物を中心としたヴィーガンの食生活は、ビタミンやミネラルが豊富で低カロリーなため、健康の改善や維持に役立つとされています。
ヴィーガンの食生活では、生活習慣病のリスクが低減されることが研究で示されており、健康意識の高い人々に支持されています。
デンマークのCopenhagen University Hospitalが、ベジタリアン・ヴィーガン食の総コレステロール(TC)・LDL-C・TG・APOB値に与える影響を混合食と比較した結果、次のような結果が得られました。
混合食グループと比べてベジタリアン・ヴィーガン食は血中TC(-0.34 mmol/L)・LDL-C(-0.30 mmol/L)・APOB(-12.92 mg/dL)*の低下と関連した。
出典:メディカルオンライン
- 血中TC:総コレステロールのこと
- LDL-C:悪玉コレステロールのこと
- APOB:アポリポタンパク質B(主に肝臓と腸で合成される血漿タンパク質。脂質およびコレステロール代謝において重要な役割を果たす)のこと
ヴィーガンは栄養失調になる?不足しがちな栄養素を完全ガイド」をご覧ください。
ヴィーガンと栄養に関する情報は、「
ヴィーガン・ベジタリアンの違いとその他の菜食志向
ヴィーガンは最も厳格な菜食主義者とされますが、他にも様々な種類の菜食志向が存在します。
ヴィーガン
ヴィーガン(Vegan)は、動物性のものを一切摂取せず、肉や魚だけでなく卵や乳製品を含む動物由来の食品も避けます。また、衣類や生活用品においても、毛皮やレザー、ウールやダウンなど、動物由来の素材を使用しません。
ヴィーガンには以下の4つのカテゴリーがあります。
ヴィーガン | 動物性食品を食べない他、日用品全般において動物からの搾取や利用を避ける。 |
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フルータリアン | 果物や種子類などのみを食べる。 |
ローヴィーガン | 基本的に非加熱(生)の食品を摂取する。 |
オリエンタルヴィーガン | 動物性食品のほか、五葷(ニンニク、ニラ、あさつき、ネギなど)を摂らない。 |
ヴィーガンは「アニマルライツ(動物の権利)」の精神に基づいており、食べ物だけでなく動物由来の服や動物由来の成分を使用した化粧品も使用しません。
現在では、エコファーやヴィーガンレザーなど、動物を犠牲にしない素材も増えており、一見して本物と見分けがつかないほど進化しています。
動物由来成分を使用しないヴィーガンコスメは、製造において動物実験を行っていないことも重視されます。
ヴィーガンは、動物に優しいだけでなく持続可能な生き方のひとつとして、現在では多くの人々や企業にその影響力を広めています。
ベジタリアン
ベジタリアン(Vegetarian)は、肉を摂取しない食事スタイルの人を指します。ベジタリアンは主に植物性の食物で栄養を摂り、動物性の食品(肉、魚、鳥など)を避けます。ただし、ベジタリアンにはいくつかの異なるサブグループが存在します。
ラクトオボ・ベジタリアン | 植物性食品と卵製品、乳製品を食べる。(一般的なベジタリアンとはこちらに該当します。) |
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ラクト・ベジタリアン | 植物性食品と乳製品を食べる。 |
オボ・ベジタリアン | 植物性食品と卵製品を食べる。 |
ポーヨーベジタリアン | 植物性食品と魚介類、卵製品、乳製品、鶏肉のみを食べる。 |
ペスカタリアン
ペスカタリアン(Pescatarian)は、肉類を避けるものの、魚介類は摂取する菜食主義者のことです。魚介類は、オメガ3脂肪酸や、ヴィーガンに不足しがちなビタミンB12などが豊富に含まれており、これらの栄養素を摂るためにこの食生活を選択する人がいます。
ペスカタリアンは、完全なヴィーガンまで達しなくても環境や健康面で利益があるとされており、特に健康志向の高い人々に人気があります。
フレキシタリアン
フレキシタリアン(Flexitarian)は、主に植物性の食事を摂りながら、時折肉や動物性の食品も摂取する食事スタイルを指します。
言い換えれば、フレキシタリアンはヴィーガンやベジタリアンと同様に植物性の食事を好む一方で、必要に応じて動物性の食品を摂ります。
フレキシタリアンはヴィーガンのように厳格ではありませんが、環境への負荷や健康面を気にする現代人にとって、柔軟な菜食主義として認知されています。
プラントベース
プラントベース(Plant-Based)とは、主に植物性食品に基づいた食生活のことで、動物性食品は限定的に摂取します。この食生活は環境と健康に配慮しており、ヴィーガンやフレキシタリアンと共通点がありますが、厳格さの程度が異なります。
ただし、「プラントベース」の定義は人によって異なり、ある人は植物性の食品を主に摂りつつも、時折肉や動物性の食品を摂取することもあります。
従って、「プラントベース」が厳密なヴィーガンやベジタリアンの食事スタイルを指す場合もあれば、それに近いが厳密ではない食事スタイルを指す場合もあります。
ヴィーガンはどんな食事を摂ってるの?
ヴィーガンの食事は、大豆製品、野菜、果物、穀物、豆類、ナッツ、シードなどが主な食材として活用されますが、ほかに次のような食品が多く使用されています。
代替肉
代替肉は、動物由来の肉を模倣して、植物性やその他の非動物性の成分を使用して作られた食品です。植物性たんぱく質や大豆、大豆たんぱく、麩、穀物、野菜などを主成分とし、肉の風味や食感を再現しています。
植物性ミルク
牛乳、乳製品の代わりには、植物性ミルクを使用します。植物性のミルクには、次のような種類があります。
豆乳、オーツミルク、アーモンドミルク、ココナッツミルク、ライスミルク、ヘンプミルク、ライスミルクなど
その他、食事のバリエーション
ヴィーガンの食事は、肉や魚類を含まないため、多様な植物性食材を使って工夫して調理します。野菜や豆類を使った炒め物やグリル、スープやサラダ、デザートなどもアレンジ可能です。
卵の代わりになる代替卵も、キューピーをはじめ大手食品会社から発売されているほか、アイディア次第で本物と変わらないメニューを楽しむことができます。
ヴィーガン向けの商品も増えており、ソイミルクやヴィーガンチーズも発売されています。これにより、味や食感に変化をつけることが可能です。
ヴィーガン料理のレシピ本も充実
また、ヴィーガンのレシピ本もたくさん出版されています。中でも、ヴィーガンカフェから出版された本は大人気。
東京は新宿、池袋、銀座にあるヴィーガンカフェ「アインソフ」や、山梨のヴィーガンカフェ「Fluunt KOFU」からもヴィーガンレシピ本が出版されています。
まとめ
ヴィーガンは、動物性食品を避ける食生活を選択する人々のことです。その理由は動物の権利保護、環境保護、健康上の理由からです。
さまざまな種類のヴィーガンやその他の菜食志向があり、それぞれのライフスタイルや価値観に合わせた食生活が選ばれています。
ヴィーガンの食事は、一見すると食材が限られていてハードルが高いように思われがち。ですが、実際には多様な食材を使ってバリエーション豊かな食事を楽しむことができます。
今後もヴィーガンの考え方や食生活が広まり、環境や健康に配慮した選択がますます重要視されるでしょう。