世界中で取り組まれている「フードロス(食品ロス)」の問題は、私たちの生活や地球環境に多大な影響を与えています。
本記事では、フードロスの現状、その影響と原因、減らすための世界各国の取り組みや私たちにできることについて詳しく解説します。
フードロスの現状
世界での状況
WWF(世界自然保護基金)と英国小売り大手のテスコが2021年7月に発表した報告書「Driven to Waste」によると、世界で栽培・生産された全食品のうち約40パーセントに当たる25億トンの食品が年間で廃棄されていることが明らかになりました。
この大量の食品ロスは、人類にとって資源の無駄遣いであるだけでなく、環境負荷の増大や地球温暖化を加速させる一因となっています。
食品ロスの大半は家庭から出されており、世界全体の食品ロスの61%が家庭からの排出であることが分かっています。外食産業や小売業など他の分野も無視できない量の食品ロスを出しています。
日本での取り組み
2012年度から2020年度の日本国内の食品ロス量の推移
出典:農林水産省プレスリリース『食品ロス量(令和2年度推計値)を公表』
日本では、2020年度の年間食品ロス量が522万トンと報告されています。そのため、政府は食品リサイクル法と食品ロス削減推進法を設け、食品ロス削減に向けた具体的な取り組みを行っています。
また、国民一人ひとりの行動変容も重要であり、「買い過ぎない」「作り過ぎない」「注文し過ぎない」ことが強調されています。このような意識の変化が、食品ロス削減への第一歩となります。
食品ロス削減への世界的な取り組み
罰金を設ける国も
アメリカでは、2030年までに食品ロスと廃棄量を半減するという目標を掲げています。フランスでは2016年に食品廃棄禁止法が制定され、売れ残った食品の廃棄を禁止しました。こうした法律による規制は、食品ロス問題への真剣な取り組みを示しています。
これらの国々でのアプローチは、他の国々にも影響を与え、食品ロス削減に対する国際的な連携と意義を高めています。
学校や企業での取り組み
「シェアテーブル」という学校での取り組みが、食品ロス削減に効果的であることが明らかになっています。生徒が食べきれなかった食品を共有することで、余剰食品の有効利用が進められています。
企業では、レトルトカレーなどの商品開発を通して、食品ロス対策を行っている例もあります。これらの取り組みは、食品ロス削減だけでなく、災害時の防災食としての活用も視野に入れています。
フードロス削減に向けた個人の取り組み
適切な買い物と調理
食品ロス削減のため、私たちができることは意外と多いです。まず、必要以上に食品を買いすぎないようにすること、作る量を考慮して無駄なく調理することが基本です。
また、家庭での食品保存方法を見直すことも重要です。適切な保存方法を実践することで、食品の鮮度を保ち、廃棄される食品の量を減らすことができます。
ドギーバッグの利用
外食時に食べきれなかった食品を持ち帰る「ドギーバッグ」の活用も、食品ロス削減に貢献しています。フランスでは飲食店からのドギーバッグ提供が法的に義務付けられるなど、ドギーバッグの普及に力を入れている国もあります。
持ち帰った料理を次の食事で楽しむことで、食品の無駄遣いを防ぎ、同時に料理を二度楽しむことができます。ドギーバッグは、食品ロス削減だけでなく、日常生活の中でカンタンにできるエコ活動の一つとして注目されています。
食品ロスを削減できる通販サイトの利用
フードロスとSDGs
食品ロス削減と持続可能な開発目標
食品ロスの削減は、持続可能な開発目標(SDGs)の一つでもあります。特に、「責任ある消費と生産」を掲げるSDG12において、食品ロスの削減は重要なテーマの一つとされています。
食品ロスの削減は、食糧安全保障の向上や温室効果ガス排出の低減、資源の有効活用といった面でポジティブな影響をもたらし、持続可能な社会の実現に寄与します。
国際的取り組みと協力
国連世界食糧計画(WFP)がノーベル平和賞を受賞したことは、世界的な食糧問題とそれに対する国際的な取り組みの重要性を世界に示しました。食品ロス削減も、グローバルな視点で取り組むべき課題です。
各国が連携し、知識や技術の共有、政策の共同推進を図ることが、世界的な食品ロスの削減には不可欠です。私たち一人ひとりが意識を高め、地球規模での食料問題の解決に貢献することが求められています。
革新的なアイデアと技術での対策
持続可能な食品包装
食品の保存性を高めることは、食品ロス削減に直結します。課題は、環境負荷が低く、かつ食品の鮮度を長く保てる包装技術の開発です。
- 植物由来の材料を使用した持続可能な包装
- 賞味期限が近づくと色が変わるラベル など
これら技術の普及は、生産者や小売業者だけでなく消費者にもメリットがあり、環境に配慮した持続可能な消費行動へと繋がります。
デジタル技術の活用
食品ロス削減に対するデジタル技術の活用も進んでいます。賞味期限が近い商品をお得に提供するスマートフォンアプリや、余剰食材を地域社会でシェアするプラットフォームなどがあります。
これらの技術により、効果的な情報の共有やマッチングが実現され、食品の有効利用が促進されています。技術の進歩が、社会問題の解決に貢献している例です。
まとめ
食品ロスは、単に食べ物を無駄にするだけではなく、経済的損失や環境への負荷など、幅広い問題を引き起こしています。しかし、この問題に対する意識が高まり、国内外で様々な取り組みが行われていることは希望の光と言えるでしょう。
一人ひとりができることから始め、食品ロス削減に貢献しましょう。そして、私たちの未来と地球の環境を守るために、持続可能な消費行動を心がけることが何よりも大切です。