パーム油は私たちの生活に深く浸透している植物油で、その利用範囲は想像以上に広がっています。食品はもちろん、化粧品や洗剤、バイオ燃料にも使われているのです。
一方で、パーム油の生産には多くの問題が指摘されており、環境への配慮や持続可能性が大きな課題となっています。
今回は、パーム油の利用実態と課題について、詳しく解説します。
パーム油(パームオイル)とは
パーム油とは、アブラヤシの実から採れる植物油のことです。アブラヤシは熱帯地域が原産で、生産量が多く経済的にも重要な作物となっています。パーム油には、さまざまな利点があります。
パーム油の特徴・メリット
1.酸化安定性が高く、保存が効く
パーム油は食品加工に適した油脂です。高い酸化安定性と熱安定性を持ち、長期保存が可能です。また、融点が低いため、口溶けの良い食感を作り出せます。
2.生産性が高い
さらに、パーム油の生産性が高いのも大きな利点です。単位面積当たりの収穫量が多く、安価で大量生産ができるため、世界で最も多く消費されている植物油脂なのです。
パーム油の相場
出典:世界経済のネタ帳
2024年4月時点で、パーム油とヤシ油の4月の国内卸値は3カ月連続で上昇しました。値上がり幅は、パーム油は前月比4.0%高、ヤシ油は同2.4%高と、国際相場の上昇や円安傾向を反映し、それぞれ2022年4〜5月以来約2年ぶりの大きさとなりました。
パーム油とパーム核油の違い
パーム油とパーム核油は、どちらもアブラヤシの木から得られる油ですが、異なる部位から抽出されるため、化学的特性や用途に違いがあります。
| 原料 | アブラヤシの“果肉”から抽出 |
|---|---|
| 脂肪酸組成 | 室温では半固体の状態。色はオレンジがかった赤色。 |
| 物理的特性 | パルミチン酸、オレイン酸などの飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のバランスが取れている。 |
| 用途 | 食用油、マーガリン、ショートニング、スナック菓子、加工食品、石鹸、洗剤、バイオディーゼルなど |
| 原料 | アブラヤシの“種子(核)”から抽出 |
|---|---|
| 脂肪酸組成 | 室温では固体の状態。色は白っぽい。 |
| 物理的特性 | ラウリン酸、ミリスチン酸などの飽和脂肪酸が多い。 |
| 用途 | 石鹸、洗剤、化粧品、食品添加物など |
パーム油とココナッツオイルの違い
パーム油とココナッツオイルは、どちらも熱帯地域で広く使用される植物油ですが、異なる植物から得られるため、特性や用途に違いがあります。
パーム油はアブラヤシから得られる油ですが、ココナッツオイルはココナッツの果肉(コプラ)から抽出されます。
| 原料 | アブラヤシの果肉 |
|---|---|
| 産地 | 主にマレーシアとインドネシア |
| 用途 | 調理油、マーガリン、スナック菓子、加工食品、石鹸、洗剤、化粧品、バイオディーゼル |
| 環境への影響 | 環境への影響が大きい。熱帯雨林の伐採や泥炭地の破壊、生物多様性の喪失などが問題視されている。 |
| 原料 | ココナッツの果肉 |
|---|---|
| 産地 | 主にフィリピン、インドネシア、インド |
| 用途 | 調理油、ベーキング、スムージー、健康食品、化粧品、ヘアケア製品、スキンケア、マッサージオイル |
| 環境への影響 | パーム油ほどの大規模な環境破壊は少ないが、ココナッツ栽培も土地利用や生態系への影響が懸念される。 |
パーム油が使用されている商品
パーム油は、以下のような幅広い分野で利用されています。
| 食品 | インスタント食品、菓子類、パン、マーガリン、アイスクリームなど |
|---|---|
| 化粧品・日用品 | スキンケア製品、シャンプー、石鹸、洗剤、歯磨き粉など |
| バイオマス | 発電や燃料として利用 |
このように、パーム油は私たちの生活に深く浸透しており、様々な場面で活躍しているのです。特に日本では、食品分野での利用が多く、一人当たり年間約4kgものパーム油を消費していると言われています。
パーム油生産の問題点
一方で、パーム油の生産には深刻な問題が存在します。熱帯雨林の伐採や先住民の権利侵害、児童労働、大規模な森林火災など、環境と社会に多大な影響を与えているのです。
環境破壊の問題
パーム油の生産のために、インドネシアやマレーシアの熱帯雨林が大規模に伐採されています。これにより、生物多様性の喪失や温室効果ガスの排出増加など、深刻な環境破壊が引き起こされています。
WWFの調査によると、2010年〜2030年の20年間で、世界のパーム油の生産量が、約3倍に増えることが見込まれています。

出典:WWFジャパン
また、泥炭地の開発による大規模な森林火災も発生し、周辺地域の住民の健康被害につながっています。
一方で、パーム農園は経済的に重要な産業でもあり、現地住民の生活を支えています。従って、環境保護と経済発展のバランスを取ることが課題となっています。
人権問題
パーム油生産には、さまざまな人権問題も指摘されています。例えば、先住民の土地が不当に奪われたり、労働者が過酷な環境で働かされたりする事例が後を絶ちません。
特に深刻なのが児童労働で、子供たちがパーム農園で重労働を強いられているケースもあると言われています。
こうした問題を解決するため、国際的な基準づくりが進められていますが、実効性の面で課題も多いのが現状です。
パーム油は身体に悪い?配合された石鹸は危険?
パーム油自体は食品として摂取する際には健康リスクが議論されることがありますが、石鹸に使用される場合には異なります。
パーム油は皮膚に対しても一般的には安全であり、保湿効果や柔軟効果があるため、多くのスキンケア製品に使用されています。
一部の人においては、パーム油に対してアレルギー反応を示す可能性がありますが、これは稀です。特定の成分に対してアレルギーがある場合は、製品の成分表示を確認し、使用前にパッチテストを行うことが推奨されています。
持続可能なパーム油の取り組み
環境と社会に配慮した持続可能なパーム油の生産が、国際的な課題となっています。企業や消費者の意識の高まりから、いくつかの取り組みが行われるようになってきました。
RSPO認証制度
持続可能なパーム油生産を促進するため、「RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)」という国際認証制度が設立されました。
RSPOは、環境保護や人権尊重、地域社会への配慮などを基準に、第三者機関による認証を行っています。
多くの企業がRSPO認証の取得に動いており、東京オリンピック・パラリンピックでもRSPO認証パーム油の使用が義務付けられるなど、この認証制度の浸透が進んでいます。
企業の取り組み
一部の企業では、パーム油の使用を控えたり、代替原料に切り替えたりする動きも見られます。例えば、LUSHやWELEDA(ヴェレダ)といった企業は、環境保護の観点からパーム油の使用を制限しています。
また、日清食品では代替油の開発に成功し、一部商品にすでに使用されています。コーヒーかすから作られた代替油の実用化も進められるなど、革新的な取り組みが行われています。
カルビーグループでは、2022年9月より主力商品4種類6品目のパッケージに「RSPO認証マーク」を表示することを取り決めました。
消費者の役割
持続可能なパーム油の普及には、消費者一人ひとりの意識改革も重要な鍵を握ります。RSPO認証製品を選んだり、手作りで植物油を使うなど、賢明な選択をすることが求められます。
また、パーム油の使用実態を企業に問い合わせるなど、積極的な行動も効果的でしょう。パーム油の問題に目を向け、自分ができることから実践していくことが大切なのです。
パーム油問題、わたしたちにできること
パーム油問題とは、パーム油の生産が環境破壊や人権侵害を引き起こしている問題を指します。特に、熱帯雨林の破壊、生物多様性の喪失、労働者の搾取などが深刻です。
この問題を解決するために、私たちができることをいくつか挙げます。
認証されたパーム油を選ぶ
持続可能なパーム油認証である、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)などの認証を受けたパーム油を使用した製品を選びましょう。
RSPO認証は、環境や労働条件に配慮した持続可能な方法で生産されたパーム油であることを保証します。
パーム油不使用の商品を選ぶ
購入する食品や化粧品などの成分表を確認し、パーム油が含まれているかをチェックし、パーム油が使用されていない商品を選びましょう。含まれている場合、持続可能なパーム油であるかどうかも確認します。
日本では成分表にも「植物油」と記載されることが多いため、パーム油が使用されているかどうか確認しずらい商品が多いですが、
ノースカラーズのように、米油を使用したポテトチップスなどもあります。ノースカラーズはパッケージにもパーム油の抱える問題について記載し、啓蒙に努めています。
ラヴィステラのスキンケア商品は全製品パーム油不使用かつヴィーガン処方で、パッケージにもわかりやすいマークを記載しています。
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代替品を利用する
パーム油の代替品として、オリーブオイル、ココナッツオイル、大豆油などを選びましょう。代替品を選択することで、パーム油の需要を減らすことができます。
消費行動を見直す
環境や社会に配慮した製品を選ぶことを意識しましょう。必要以上の消費を控え、資源を大切にするという意識をもち、「本当に必要なのか」一度踏みとどまって考えることも大切です。
情報を広める
パーム油問題についての情報を家族や友人、SNSで共有し、問題意識を広めましょう。啓蒙活動によって、多くの人々が持続可能な消費行動を取るきっかけになります。
支援団体に寄付する
環境保護や人権擁護を目的とするNPOやNGO団体に寄付をすることで、現地での活動をサポートしましょう。持続可能なパーム油に関する啓蒙活動を行っている団体は、下記を参考にしてみてください。
政府や国際機関、企業に働きかける
政府や国際機関に対して、持続可能なパーム油の生産と貿易を促進する政策を導入するように働きかけましょう。
また、購入する製品を製造している企業に対して、持続可能なパーム油の使用を促す問い合わせを行いましょう。消費者の声は企業にとって重要なフィードバックとなります。
これらの取り組みを通じて、私たち一人一人がパーム油問題の解決に貢献することができます。持続可能な消費行動を心がけることで、環境保護や人権擁護に繋がる大きな力となります。
まとめ
パーム油は、私たちの生活に欠かせない重要な油脂です。しかし、その生産には環境破壊や人権侵害など、さまざまな問題が存在しています。持続可能な社会を実現するためには、政府、企業、消費者が一体となって対策を講じる必要があります。
RSPO認証制度の普及や企業の自主的な取り組み、消費者一人ひとりの意識改革など、さまざまな努力が重要です。
パーム油の問題は、地球規模の課題ですが、私たち一人ひとりができることから始めることが大切なのです。

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