世界的に人気を集めている「ヴィーガンコスメ」をご存知ですか?
動物や地球環境に優しいヴィーガンのライフスタイルは、今や食だけでなく、化粧品業界にも普及し始めています。
ヴィーガンコスメって何?
ヴィーガン*コスメとは、動物由来の成分を使用せず、また動物を犠牲にせず製造された化粧品のことです。
*ヴィーガン(ビーガン):環境や動物保護を目的として、動物性の食品や製品を避けている人たちを指す言葉で、1900年代のイギリスで発祥した考え方。衣食住において、肉・魚・卵・乳製品・ハチミツなどの使用を避け、牛皮やウール、シルク、ファーなど動物性の皮製品も使用しません。
多くは動物愛護や環境保護が主な理由ですが、健康の観点から食生活のみヴィーガンを選択する人と区別する意味で、後者を「ダイエタリーヴィーガン」と呼ぶこともあります。
この「アニマルライツ」の考え方をもとに製造された化粧品がヴィーガンコスメです。
ヴィーガンコスメには大きく二つの特徴があります。
1. 動物由来成分を使用しない
化粧品成分の多くには動物由来の成分が含まれています。ヴィーガンコスメはこれらの成分を使用せず、植物由来の成分を使用して製造されています。
具体的には以下の動物由来成分を使用しません。
- ラノリン
- 鶏由来のヒアルロン酸
- コラーゲン
- エラスチン
- 馬油
- サメ由来のスクラワン
- ミツロウ
- シルク
- コチニール色素(カルミン色素) など
すべてが動物由来とは限らない可能性もあります。
2. 動物実験を行わない
ヴィーガンとは動物を犠牲にしない考え方であることから、化粧品の製造過程において動物実験を行っていないこともヴィーガンコスメには求められます。
ただし、化粧品ブランドの中には、
- 親会社が動物実験を行っている
- そもそもブランドが「動物由来成分を使用しないこと=ヴィーガン」と認識していて動物実験をしないことについてはヴィーガンコスメの基準として考えていない
- 中国向けの商品に関しては動物実験を行っている
など、ヴィーガンコスメとしては疑問が残る化粧品も混在しているのが現状です。
例えば、大手の資生堂などは、日本国内では動物実験を廃止していますが、中国への輸出向け化粧品は、中国の基準に従い動物実験を行っていますので注意が必要です。
動物実験を行っていない化粧品は安全性に問題はないの?
結論からいうと、化粧品開発において、動物実験は必須ではありません。
悲しい事実ではありますが、過去に数え切れないほどのウサギやネズミを使った安全性テストのための動物実験が行われ、すでに2,000〜3,000種類もの安全性の確認がとれている化粧品成分が存在します。
また、安全性の確認がとれたからといってイコール安心だとも言い切れません。
動物で行う実験は人間とは個体差があり、正確な安全性の保証という点において疑問が残りますし、動物実験の安全性テストは単一成分で行われるため、複数の成分を使用した際の複合的な影響については未知数であるためです。
昨今では技術も進み代替法で安全性テストができるようになっていますので、消費者側は倫理的な視点をもち、優しい選択をすることが求められます。
ヴィーガンコスメとオーガニックコスメの違い
オーガニックコスメの認証条件の中に動物由来成分を使用しないことが条件となっている認証団体もあるため、オーガニックコスメとヴィーガンコスメが区別しづらい印象がありますが、両者は全く別の考え方になります。
日本においては「オーガニックコスメ」の明確な基準はないため、ほんの0.01%でもオーガニック成分を配合していればメーカー判断で「オーガニックコスメ」と名乗ることができます。
また、認証を取得している場合でも、認証機関によってその基準が異なりますが、ヴィーガンコスメの場合は動物由来成分を使用しないことはすべてに共通しています。
ヴィーガンコスメ認証・ヴィーガン認証の種類
前述の通り、「ヴィーガンコスメ」は動物由来成分を使用しない化粧品ではありますが、認証を取得していない化粧品も多いため、動物実験の有無については考慮していないブランドも混在しています。
そのため、ヴィーガン認証マークを取得しているブランドを選んだり、またはブランドに問い合わせるなど、ブランドの理念や代表の考えなどを調べて、どこまで信頼できるところを選ぶ必要があります。
ヴィーガンコスメの認証には、動物の倫理的扱いを求める団体であるPeTAや、The Vegan Society、VEGAN.ORGなどの認証マークが、世界的に有名なものとして存在しています。
また、国内ではNPO法人ベジプロジェクトジャパンが、食品や化粧品のヴィーガン認証を行っています。
PeTA
世界最大の国際動物愛護団体「PeTA(People for the Ethical Treatment of Animals)」が行っている認証。動物由来の原料を一切使わず作られている製品にのみ認証が与えられます。
申請者はPeTAにチェックリストを提出し、PeTAが内容を確認します。
監査および更新の必要は定められていません。
国 | アメリカ |
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設立年 | 1980年 |
認証機関 | PeTA |
認証基準 |
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The Vegan Society
The Vegan Societyは、基準も審査もPetaよりも厳しく定められています。開発や製造過程においても動物由来の素材とその派生素材を使用しないことを基準としており、監査があります。
毎年、認証更新が必要です。
国 | イギリス |
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設立年 | 1944年 |
認証機関 | The Vegan Society |
認証基準 |
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VEGAN.ORG
国 | アメリカ |
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設立年 | 1995年 |
認証機関 | VEGAN.ORG |
認証基準 |
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NPO法人ベジプロジェクトジャパン
ベジプロジェクトは、2013年に京大の修士課程に在籍していた代表の川野陽子氏を中心に、京都大学の食堂にヴィーガン基準のベジメニューを導入するというプロジェクトから始まりました。
2016年よりNPO法人となり、ベジタリアン・ヴィーガン認証マークを発行する認証制度や、企業やまちづくりを行う行政との協業、観光案内所等で配布されるベジマップ制作、情報発信等を行っています。
国 | 日本 |
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設立年 | 2016年 |
認証機関 | NPO法人ベジプロジェクトジャパン |
認証基準 |
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Vegetarian Society
国 | イギリス |
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設立年 | 1847年 |
認証機関 | Vegetarian Society |
認証基準 |
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ヴィーガンコスメのメリット
1. 動物と地球環境に優しい
動物由来成分を使用しないヴィーガンコスメは、動物に優しいことが最大のメリット。さらに、気候変動、地球温暖化の最大の原因として畜産業が挙げられていることからも、ヴィーガンコスメを選択することは環境保護の観点からも優しい選択肢といえるでしょう。
2. お肌に優しいものが多く、複合的な有効成分が期待できる
環境保護や動物愛護の精神からヴィーガンコスメを選択する人が多いことから、ブランド側も自然由来成分を使用したり、ナチュラルな製法にこだわったものが多い傾向があります。
石油系合成成分と比較すると植物由来の原料は何十倍も高価であるため、植物のもつ有効成分をあますことなく享受できる点もメリットです。
ヴィーガンコスメのデメリット
1. 使用できる成分が限定される
限定されてしまうがゆえに、化学合成成分を使用した化粧品も多く、お肌にとってのデメリットが懸念される石油系合成成分を使用したものも混在しています。
ヴィーガンコスメは基本的には自然由来成分を使用したものが多いですが、その分価格が高くなってしまうというデメリットもあります。
2. 購入できる場所が限定的
海外ではヴィーガンコスメの市場が伸びていますが、まだ日本ではヴィーガンコスメが購入できる場所が限られています。
ドラッグストアなど身近な場所で購入することが難しいため、コスメキッチンなど専門ショップに足を運ぶか、基本的にはオンラインショップで購入することになります。
3. ヴィーガンコスメなのか一見してわかりづらい
ブランドの中でヴィーガン対応の商品と動物由来成分を使用した商品とが混在していて、どれがヴィーガンコスメなのかわかりづらいという問題があります。
最近では日本の化粧品ブランドの中にもヴィーガンコスメが増えてきてはいますが、成分を確認しなければわからないものの方が多いのが現状です。
4. 植物アレルギーのリスク
ヴィーガンコスメは植物由来成分を使用していたり、香料も天然の精油を使用している商品が多く、有効成分をホリスティックな形で享受できる点はメリットでもあります。
一方で、植物アレルギーが起きてしまう可能性もあるため、気になる方はテスターなどでパッチテストを行なった上で購入しましょう。
世界中で広がるヴィーガンコスメ市場
巨額で買収されるヴィーガンコスメブランド
近年、化粧品業界においては、消費者層から「ヴィーガンコスメ」「オーガニックコスメ」など、クリーンビューティー製品が求められるようになっています。
日本の大手化粧品メーカーのKOSEがアメリカのヴィーガンコスメブランド「Awake(アウェイク)」を135億円で買収したニュースも記憶に新しいのではないでしょうか。
参考:仏・ロレアルとナチュラ・アンド・コー、「イソップ」の買収に合意 (PR TIMES)
ザボディショップ(THE BODY SHOP)が全商品ヴィーガンに
さらに、2024年1月には、イギリス発の化粧品ブランド「ザボディショップ(THE BODY SHOP)」が、全製品でヴィーガン協会「ザヴィーガンソサエティ(The Vegan Society)」の認証を取得しました。
参考:ナチュラ&コー、「ザボディショップ」を欧州投資大手に389億円で売却(WWD JAPAN)
まとめ
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ヴィーガンコスメという特性上、使用できる成分に限りは出てきてしまいますが、最近では技術の発達によって多くの成分が動物由来でなくても調達できるようになってきました。
保湿成分として人気の高い鮫から得るスクワランも、オリーブなど植物から得ることができるため、通常の化粧品と比較して成分が劣るようなことはありません。
私が開発しているヴィーガンスキンケアブランドの「LA VIE STELLA(ラヴィステラ)」も、通常は鶏のトサカから得られる成分であるヒアルロン酸はバイオ発酵によるもので調達しています。
化学合成では生み出せない自然のパワーが凝縮されています。
世界的にも企業の環境への配慮が重視される傾向にあり、動物福祉を求める声も高くなってきています。
今後も、動物に優しい化粧品が世界のトレンドを牽引していく流れは加速していくのではないでしょうか。
ぜひみなさんもヴィーガンコスメを通して、お肌をいたわると同時に地球や動物のこともいたわってみてくださいね。
きっと心豊かな新しい感覚を感じられることでしょう。